ほら見たことかと。
ゾロの顔が一瞬語るのを見た。
でも。
俺には、ナミがそんな奴には見えない。
追いかけねばと思った。
海賊なんかキライと語ったナミの顔を思い出す。
必死に何かを耐える顔。
「俺はナミが航海士じゃないとイヤだ!」
どう・・・応えられるか、心配で。
自分で追いかけることができれば、どんなにいいか。
でも、今はここから先へは進めない。
ここには、コックと、倒すべきヤツがいる。
手に入れてからでないと、先へ進んではイケナイ。
だから、叫んだ。
信じていたから。
「・・・しょうがない船長だな。ウソップ。行くぞ。」
ゾロの目が呆れたように見開き、それから優しい色を映し出した。
俺、ゾロに甘えてる。
だけど、俺は知ってる。
ゾロもナミがそんな奴じゃないってホントは思ってるコト。
ちゃんとゾロも分かってる。
俺より先に。
ナミにゾロが出会っていたら。
きっと、二人は俺の仲間にならなかったに違いない。
そう・・・なぜだか、思った。
ごめんな、ゾロ。
小さく呟く。
ナミに取られたくないから、先に告白した。
二人ともまだ気付いていない。
いや、もう気付かないのかもしれない。
俺が間に入ったから。
お似合いだと。
思ってる。
俺の自慢の二人だ。
ゾロがヨサクとジョニーの船の上で固まっているのが見えた。
なんだ、どうした?
ふと、視線の先で、巨大なガレオン船が壊れていくのが見えた。
大きな十字架を背負っている男を見た。
ドクンッと心臓が大きな音を立てた。
「ゾロ・・・」
やはり。
ここは外せない場所だった。
いろんな歯車が重なり合って。
大きなきしんだ音を立てている。
下手をしたら。
すべてを失ってしまう。
だが、すべては自分の手の平で動いている訳ではない。
約束通り。
見ているしかなかった。
ゾロは夢を叶える上で。
一番必要な存在。
信じるしかない。
それなのに。
すべてを俺が見ているのに。
自ら命を落そうとしたのに、腹が立った。
必要なコトなのかもしれないけれど。
手の間を滑りぬける感覚に居ても立ってもいられなくなった。
気がついたら、ソイツの元へ飛んでいた。
俺からゾロを奪おうとした男。
大きな威力的な気。
ゾロがまだ敵わないのも分かる気がした。
何を目指すかと問われて、迷わず海賊王と答えた。
それ以外になる気はない。
目指す気もない。
ゾロの刀が。
きらめくのを目にして、思わず安堵した。
もう大丈夫と。
ふわりと全身が軽くなる。
ゾロが俺の要。
ここはそれほど重要な場所ではなくなった。
ゾロが俺に。
約束してくれたから。
ゾロに触れたい。
キスしたい。
だけど、それは後。
コックを手に入れて。
ナミを取り戻して。
グランドラインに向かう船が脳裏によぎる。
すべてがうまく行く気がして。
不敵な笑みが自然と浮かぶ。
・・・それはゾロとの仲も。
進んでいく気がした。
そう感じると。
こんなところで油を売っている場合じゃない。
「おまえみたいな恩知らず俺がぶっ飛ばしてやる。」
早く先へ進もう。
−完−
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