送り火


燃え上がる炎。
遠く輝くその光にゾロは目を細めた。
「送り火か。」
どこかの町だろうか。
浮かび上がる文字にどんな意味があるのか知らないが、 闇に溶けるように浮かび上がる炎は見覚えがある。
ちょうど、くいなが死んだその年の盆。
燃え上がる炎が、本当に死者を送り出しているのだと。
本当に思えた。
炎の先端が、闇に薄れて消える。
その様を見て本当にそう想った。
決して届かないのだと、現実を突きつけられた感じだった。
人であるこの身では、あそこまで昇れない。
その先へは絶対に行けない。
闇に消える境界線に、そう。
想いを飛ばした。
「ゾーロ? どこ見てんだ??」
ふいに首だけ目の前に降ってきて、思わずゾロは2・3歩後ずさってしまった。
「お、驚かすなよ、ろくろ首!」
「んだよぉ? ちょっと邪魔臭いから首だけ落としただけだろ。」
思いっきりほっぺたを捻られてむっすぅとした顔でルフィがくるりと 身体を反転させながら、ゾロの目の前の船の縁に着地する。
「おい、際どいところに立つな。落ちるぞ。」
「そしたらゾロが助けてくれるだろ? んん、問題ねえ。」
「・・・あるに決まってるだろ。って、言ってるそばからっ」
ぐらりと揺れる体に慌てて手を伸ばして、抱き締める。
「ととと、セーフ。」
「何がセーフだ。」
驚いたのか早めの心音。
そのぬくもりをどうしたことか、ゾロは離せずにいた。
「ゾロ?」
ルフィの戸惑った声に、ハッと我に返って、ゾロは慌ててルフィから手を 離そうとした。
だが、逆にルフィがぎゅっと抱き締めてくる。
「ゾロ? なんかあったか?」
耳元に囁かれる声。
何も無い。別にそうじゃない。
「あ・・・なんもねえよ。」
出した声は思ったよりも頼りなくて。
唇をかみ締めた。
「そっか。じゃ、キスしよっか?」
「なっ・・・」
いきなりと言えば、いきなりなルフィの言葉に、ゾロは慌てて顔をあげた。
ふわりと落ちるキス。
謀らずとも唇を差し出す形になっていたことに気付いてゾロは暴れ出した。
「ふざけんな。離せ。」
「ふざけてねえよ。なあ、いい加減落ちねえ?」
「誰がっ。海に突き飛ばすぞ。」
「んん、それは困る。ちぇっ。ま、いっか。ようは慣れだし。コレは 慣れてきただろ?」
ちょんちょんと唇を突つかれて、ゾロは真っ赤になって顔を背けた。
突拍子もない行動には慣れてきたが、面と向かって言われると、どうにもこうにも・・・。
「一人で突っ走ってるんじゃねえっ。おりゃぁ、寝る。」
「うん。一人で突っ走らねえよ。意味ねえもん。それじゃ。へへ。 俺も寝るかな。」
麦わらを拾って、ぐいっと押し付けると、ゾロは黙って歩き出した。
すぐ後ろからルフィの気配が近づく。
ルフィのことをキライになれないのなら・・・
落ちるしかないのだろうか。
惹かれる自分がいる。
だが、この気持ちは。
何なんだろう。
何もかも。
炎が吸い取って闇に溶かしてくれればいいのにと。
ふと思って、ゾロは苦笑いした。
溶ければ何か、変わるだろうか?


−完−





【独り言】
なんとなくしっぽりといってみたかっただけです。
弱みに付け込んで・・・・なんてことは、しませんよ。
ルフィはオットコマエですから!(笑)
・・・はよ、ラブラブさせたいにゃ。
2001.8.18.ten.



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