4月山桜


ウソップは山一面に咲く桜を思い出して絵を描いていた。
「お、ウソップ。それって『桜』だろ? チョッパー喜ぶかもな〜。」
ルフィが覗き込んできてにっこりと笑った。
「なんだルフィか。そうだ。桜だ。春だしな。船の中にも春らしいもん 置こうと思ってよ。」
「なんか、いいな。絵って。いつまでも枯れずにあるもんな。」
ゴロンと横になって空を見上げるルフィに、 ウソップは首を傾げた。
「なんかあったのか?」
「んー、何にもねえ。ただ、ちょっとな。俺もいつかは死ぬのかなって。」
「・・・一応、人間の生きる範囲内には死んどけよ?」
「どうかな? 生き続けられるなら生きていたいけどな。 でもそうじゃねえ。俺はゾロの目の前で死ぬのかな?って。 夢の途中で死ぬのかなって。そういうコトもあるのかなぁって ちょっと思った。」
「ちょっとだけかよ。グランドラインだぞ、いっぱいいっぱい強い奴が いるんだぞ。し、死ぬかもしれねえじゃねえか。」
「そうなんだけどなぁ。俺は死ぬコトなんてちっとも考えてなかった。」
あっけらかんと笑うルフィに、ウソップは黙り込んだ。
ルフィらしいと思う反面。
なぜだかものすごく危うい感覚がした。
「死ぬこと思って動く奴なんていねえんだから、いいんじゃねえのか。 ルフィ。」
死ぬのは怖いけれど。
それよりも、臆病なまま震えて隠れて、そして殺されるほうが百倍も 百万倍もイヤだ。
本能で動く分、そういうコトが無いんだろう。
コイツ等には。
羨ましい反面、何かあったときが脆そうだとそう思っていた。
「そうだなぁ。考えてもムダだよな。うん。よしっ。ゾロに会ってこよっと。」
「ちょっと待て〜っ。どっからそうなるんだ?」
その言葉も空しく。
船尾で寝ているはずのゾロのところへ一直線に走るルフィを、 ウソップは見送った。
「行っちまったよ。おい。」

季節はもう春。
穏やかに・・・緩やかに。
温かな日差しが包み込んでくれる。
春爛漫。
すべての生き物の。
活動の季節である。





【独り言】
最後のTOPSS。一年しか続きませんでした・・・。 2002.4.3.ten.




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